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控え室に戻って、汗をなおざりに拭く。ソファに座って、瞑目。
疲れ、た。
歌う人、が、小さい頃からの夢だったけれど。
こんなに疲れるものだったんだね。
今更。
目を開いて、小さなカバンの中からスマホを取り出した。緑色のランプが点滅。ライン、にメッセージが来てるらしい。未だにラインは、嫌いだったり、ね。
スポーツ飲料を喉に流し込む。そのついでみたいにしてラインを起動。メッセージは一つだけ。
「もう終わったでしょう?今から行くよ」
来るな、は、きっと遅い。
目を再度、瞑る。
*
ノックも挨拶もなにもかも無しで控え室のドアが開かれた。
「ノア!」
「……よ、トア」
ノア、は、あたしの二つ目の名前。本名も幻音(ノア)だけど。
入ってくるなりあたしの横に座ったトアをちらり、と見る。目が合う。にへら、と崩れたトアの頬をつついた。
「トア」
「なぁに、ノア」
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