第1章

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      * 控え室に戻って、汗をなおざりに拭く。ソファに座って、瞑目。 疲れ、た。 歌う人、が、小さい頃からの夢だったけれど。 こんなに疲れるものだったんだね。 今更。 目を開いて、小さなカバンの中からスマホを取り出した。緑色のランプが点滅。ライン、にメッセージが来てるらしい。未だにラインは、嫌いだったり、ね。 スポーツ飲料を喉に流し込む。そのついでみたいにしてラインを起動。メッセージは一つだけ。 「もう終わったでしょう?今から行くよ」 来るな、は、きっと遅い。 目を再度、瞑る。         * ノックも挨拶もなにもかも無しで控え室のドアが開かれた。 「ノア!」 「……よ、トア」 ノア、は、あたしの二つ目の名前。本名も幻音(ノア)だけど。 入ってくるなりあたしの横に座ったトアをちらり、と見る。目が合う。にへら、と崩れたトアの頬をつついた。 「トア」 「なぁに、ノア」
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