第1章

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「トア、は、本名?」 トア、は、あたしの彼女、だった。今日みたいな、ライブあとの夜明けに出待ちされて、告白されて、頷いた。 小さな小さなトア。 トア、は、本名? 小さな小さなトアは小さく首を傾げる。 「トアの本名はトアだよ?永遠の、愛、でトア」 「へぇ」 適当に頷いて、ソファに凭れる。疲れた、んだよ。横でトア……永愛、が、汗をちゃんと拭いてとか、飲み物買ってこようかとか、なんとか、言ってる、気がする。 「ノア、ねぇ、ノア」 「……なに」 「汗、拭いてあげるから、上だけでいいから脱いで」 「ん」 永愛には、なんとなく逆らえない。真っ黒のTシャツを脱ぐ。ひやり、とした、感触が、背中を行ったり来たり。 「ノアは細いねー。ちゃんと食べてる?」 「食べてるよ。昨日はパン食べた」 ぐらぐら、と頭が揺れる。眠たい。眠たい。あぁでも永愛が、なにか言ってる。聞かないと。聞かないと。 でも、 この耳は。 この体は。 歌うためのもの、なんだよ。 永愛。
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