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「少し、前の話です」
数百のオーディエンスは、数千のオーディエンスに変わった。
薄暗いライブハウスは、明るい野外スタジオに変わった。
あたしは、変われなかった。
「楽しい楽しい時間を過ごしました。楽しい楽しい遊びをしました。可愛くて小さな愛玩のような人に出会いました」
オーディエンス、の、目は熱。
冷えたあたしを焦がす。
「でもあたしはボタン、で、あの子もボタン、で。そうつまり、一つになれない二人でした」
ギターを、爪弾く。
「『バイ、』」
視界の隅っこ、に、あの子と、
知らない、男の人。
「『永遠の、愛』」
あたしの体は、
歌うためにある。
「新曲です!」
ざわあぁぁぁ……!!
叫ぶ、オーディエンス!
「バイ、永遠の、愛」
永愛が泣き崩れるのが見えた。ごめんね、ごめんね!
もう永愛があたしの永愛じゃないように、
幻音は永愛のものじゃないんだよ!
「バイ、バイ、バイ!またいつか!」
笑う。
「永遠の、愛」
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