第1章

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       * 「少し、前の話です」 数百のオーディエンスは、数千のオーディエンスに変わった。 薄暗いライブハウスは、明るい野外スタジオに変わった。 あたしは、変われなかった。 「楽しい楽しい時間を過ごしました。楽しい楽しい遊びをしました。可愛くて小さな愛玩のような人に出会いました」 オーディエンス、の、目は熱。 冷えたあたしを焦がす。 「でもあたしはボタン、で、あの子もボタン、で。そうつまり、一つになれない二人でした」 ギターを、爪弾く。 「『バイ、』」 視界の隅っこ、に、あの子と、 知らない、男の人。 「『永遠の、愛』」 あたしの体は、 歌うためにある。 「新曲です!」 ざわあぁぁぁ……!! 叫ぶ、オーディエンス! 「バイ、永遠の、愛」 永愛が泣き崩れるのが見えた。ごめんね、ごめんね! もう永愛があたしの永愛じゃないように、 幻音は永愛のものじゃないんだよ! 「バイ、バイ、バイ!またいつか!」 笑う。 「永遠の、愛」
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