ピロトーク:煽られる気持ちの俺

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 印刷所に行き、原稿を渡してきた。  ついでに――  締め切りを破るであろう、アイツの原稿渡しの日付を、ちょっとだけ伸ばしてもらうべく、頭を下げる。  最近、筆の進みが悪いアイツを、俺なりに気を遣っていた。  抱いてしまうと、その日一日腑抜けた状態になり、執筆活動に支障をきたしてくれる。  アイツの担当として原稿に、穴を空けるワケにはいかない。心を鬼にして、俺が出来ることをしてやり、快適な環境下で執筆出来るよう色々してやっているというのに―― 「ただいま、ちゃんと書いてるのか?」  玄関を開けてリビングに入ると、妙な声が聴こえてきた。 『ホント、君って可愛いよね、ちゅっ』  ――おいおい、いきなり何のCD、大音量で聴いてるんだ?  何気にアイツの声に似ているのが、余計気になってしまう。 「随分早いお帰りだね、取立ては無事に終わったんだ?」
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