ピロトーク:煽られる気持ちの俺

5/11
前へ
/220ページ
次へ
 ニンジンを切ろうとした、手元が思いっきり狂い、危うく手を切りそうになった。聴けば聴くほど、アイツの声にソックリだ。  まるで他のヤツに、言ってるみたいに聴こえて、胸の中にモヤモヤしたものが溢れてくる。 「悪いけどそのBGM、ちょっとだけボリューム、落としてくれないか? 気になって包丁の手元が危うくなる」  切るなと言わずボリュームを落とせと、譲歩してやったのに、何を言ってくれちゃってるのと、顔に書いたアイツがこっちを見た。 「やだね、今ちょうど、いいイメージが沸いてきてるんだ。邪魔しないでくれよ」  どんなイメージだよ、そりゃ。  俺の頭の中には、お前が他のヤツといいコトしてる、イメージしか、沸かないぞ!!  あーもー、チクショウ!  アレのことは横にどけておいて、今はメシを作ることに、集中しなければ。  ニンジンを慎重に切ってる最中、室内に響き渡る、エロい息遣いと、チュッという音が何度も、否応なしに耳に入ってきた。  その内―― 『……んっ、はぁはぁ…… 俺の声が傍で聴きたいって?』
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加