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ニンジンを切ろうとした、手元が思いっきり狂い、危うく手を切りそうになった。聴けば聴くほど、アイツの声にソックリだ。
まるで他のヤツに、言ってるみたいに聴こえて、胸の中にモヤモヤしたものが溢れてくる。
「悪いけどそのBGM、ちょっとだけボリューム、落としてくれないか? 気になって包丁の手元が危うくなる」
切るなと言わずボリュームを落とせと、譲歩してやったのに、何を言ってくれちゃってるのと、顔に書いたアイツがこっちを見た。
「やだね、今ちょうど、いいイメージが沸いてきてるんだ。邪魔しないでくれよ」
どんなイメージだよ、そりゃ。
俺の頭の中には、お前が他のヤツといいコトしてる、イメージしか、沸かないぞ!!
あーもー、チクショウ!
アレのことは横にどけておいて、今はメシを作ることに、集中しなければ。
ニンジンを慎重に切ってる最中、室内に響き渡る、エロい息遣いと、チュッという音が何度も、否応なしに耳に入ってきた。
その内――
『……んっ、はぁはぁ…… 俺の声が傍で聴きたいって?』
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