束の間の休息

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タカノとの旅から帰ってきて、1週間。 掟ギリギリのことをしたことがバレた俺は、膨大な量の仕事に追われていた。 「あーーようやく、これで最後か」 グッと背伸びをする。 書類を出すついでに散歩でもするか。 俺は長の屋敷にいるシュウに書類を渡して、家とは逆方向に歩き出した。 途中出会う人と雑談を交えながら適当にぶらついていた時だった。 突然、地面がグラっと揺れた。 地震か?! そう思って地面を見ると、土が小さな波をうっていた。 こんな妙な動き、どうみても地震ではない。 「あいつの仕業か」 そう思うのと同時に携帯電話が鳴った。 長からだ。 「はい」 「ツチネをなだめに行ってくれ」 やっぱ、あいつかよ。 俺は「承知」と電話を切ってから、土の波の中心地へと急いで向かった。 「わぁぁぁん」 大きな泣き声の主はツチネ。7歳の生意気な女の子。 その前にバツが悪そうに佇む7歳の男の子、リョク。悪ガキ。 周りがなだめようとしているが、泣いてばかりで聞く耳を持たない。 「おら、泣き止め。 何があったか聞かせろ」 俺はびっくりさせるため、ツチネの襟首を掴みひょいと持ち上げた。 予想通り、ツチネは目をパチクリさせて泣き止んだ。 それと同時に地面の波も収まる。 よしよし。 そう思っておろした瞬間、後ろから頭をスパーンと叩かれた。 「いってぇ! 誰だよ! 」 振り返ると……げ、シンカ。 俺が最も苦手とする女が立っていた。 「女の子を何て持ち上げた方してんのよ! 」 オールバックで髪をお団子にしており、目がつり上がっているのがよくわかる。 シンカ、25歳。職業は服飾系。特技は、見ただけで人のサイズがわかること。 里全ての人の服を作っている。 すごいことは認めるが、気が強く、何かとつっかかってくるので面倒臭い。 「うるせぇな。 すぐおろしたんだからいいだろ」 「よくないわよ! だからあんたは女心がわかんないダメ男なのよ」 「はいはい。ダメ男で結構ですよ。 で、何があった? 喧嘩か? 」 こいつに構っていても埒が明かないので、早々に切り上げる。 ツチネを見るが、怒った表情のまま何も言わない。 仕方なく、リョクを見る。が、そっぽを向かれた。 はぁ~~めんどくせぇ。
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