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「嘘だろ」
「人体実験みたいなもんじゃん」
「そこまでする必要あるか?」
「いや、むしろその世界には好きな女がいるんだろ? ラッキーじゃん」
「あぁ、そっか。 確かにこれじゃご褒美だ」
あーあ、皆好き勝手言いやがって。
どんな思いでキノ兄が決めたか知りもしないで。
「異世界に好きな人がいるからラッキー?
聞き捨てならないわね」
よく通る声が一気に人々を黙らせた。
シンカだ。
「異世界から帰る際に記憶は消してるの。
好きな人どころかお世話になった人達誰も自分を覚えていない。 けれど自分は覚えている。 そっちの方がよっぽど孤独よね。
第一思い出させたらまずいから会いに行くのもダメじゃないの?」
「その通りだ。 同じ世界とはいえ、前回とは少し離れた所に行ってもらう」
キノ兄は違う世界でって言ったんだけど、永住するのだから少しでも知っているところの方が安心だろうってことで俺たちが反対した。
キノ兄としては会いたいのに会えないのだから余計辛いのかもしれないが、そこは我慢して欲しい。
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