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俺達は男に礼を行って、目的地へと向かった。
「それにしても、コウ兄の外ヅラすごかったっすね。
あんなに簡単に情報をもらうなんて」
タカノは心底感心したように言う。
褒めたいなら外ヅラ言うな。
タカノは純粋で、熱くていい奴だがどっか抜けてると思う。
「『愛想良く丁寧に』が一番印象を薄くするのに必要なんだよ。
お前もキャラの1つや2つ持っとけ」
最初はこの外ヅラを里の奴らに見せるのが恥ずかしかったが、仕事なのだからしょうがない。
「そういや、何で一番重要なことを聞かなかったんすか? 」
「俺達がいる世界が本当に目的のとこかわかんねぇだろ。
失敗は無いだろうが、万が一ってこともある。
下手なこと言って怪しまれるのは避けたい。
だから、本屋でこの世界の事を調べるんだ。
3ヶ条目の『こちらの世界の存在を教えてはならない』には、この世界以外が存在するかもっていう疑問すら持たせたらいけないんだよ」
そんな話をしているうちに、最初の目的地、本屋に着いた。
『今一番注目の刀鍛治』
そう書かれた見出しの雑誌を手に取り、俺はニヤッと笑った。
「当たりだ。
見出しの鍛治屋は……コレだな」
パラパラとページを捲り、タカノに見せる。
「『サイジ工場……1代で築き上げ、急成長を続けている。彼は刀鍛治の世界に革命を起こした。』
……革命っすか。
気になるっす」
「ならとりあえず、ここ行ってみるか。
ただ、飯食ってからな」
「そういえば、もう昼どきっすね」
タカノがお腹をさする。
「いや、それもだが、早めに食っておかねぇと、お前そろそろ5ヶ条目破ることになりそうだし」
タカノは既に、道中不運の嵐に見舞われ、すり傷だらけになっていた。
旅慣れている俺がいなければ、こんな傷では済まなかっただろう。
危機察知テスト、合格ラインすれすれだったもんなぁ。
「あ、ここで食べ物を口にすれば、不運が和らぐんでしたね! 」
タカノはそのことを思い出したのか、ホッとした表情を見せた。
軽食屋に入ると、タカノは早速ウエイトレスが持ってきた水をかぶるという不運に襲われる。
「オレ、こんなに食事が待ち遠しいの初めてっす……」
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