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タオルで頭を拭きながら、タカノは呟いた。
そうだろうな。と、ちょっと同情。
そこへ、ちょうど注文したピラフと握り飯がきた。
タカノは意気揚々とピラフを頬張る。
「!!!! 」
1口食べた途端、タカノの顔が真っ赤に染まった。
「か、からっ、な、これ、っていうか、からっ!! 」
涙目になって叫ぶタカノに、俺は急いで水を渡す。
そして、ピラフの中に混ざっている食材をじっと見た。
「こりゃハバネロだな」
そこへ、料理長が慌ててやって来て、食材を間違えたとしきりに頭を下げた。
そして、代わりのものを持って来てもらった。
どんだけ不運に好かれてんだよ。食べ物にまで不運があったやつ初めて見た。
ようやく食事に入ると、それまで『偶然』飛んできたナイフやフォークがぱたっと止んだ。
「本当に不運が止むんすね!! 」
タカノが興奮気味に言う。
「まぁ、今は止んだが、消化したらまた始まるから気を抜くな」
俺は言いながら、握り飯を一口頬張って残りを包んでリュックに入れた。
「あれ? もう食べないんすか? 」
「あぁ。お前はしっかり食えよ」
「あ! そう言えば、金持ってないっす! 」
タカノが慌てて、テーブルをバンっと叩いて立ち上がった。
周りが一斉にこちらを見る。
目立つことすんなよ、バカヤロー。
「俺が持ってる」
ここで声を荒げたら余計目立つので、俺はできるだけ抑えて言う。
「え、いつの間に? 」
「ゲート兄妹に貰った。
旅の時はいつもあいつらから軍資金を貰うんだよ」
ゲート兄妹とは、霞の里と異世界を繋ぐ特殊能力を持つ兄妹のことだ。
この2人は空間の境目にいる為、この世界のお金を持つことができる。
「あの2人ってどこで金稼ぐんすか? 」
「金を稼ぐのはあいつらじゃない。
シュウが、前もって次行くとこの下見をして、長のOKが出たら、日雇いのバイトとかして稼ぐんだ」
「え! シュウ兄が先に来てたんすか!? 」
「お前、ここ来るまでに散々シュウから言語とかマナー習っただろうが。
不思議に思わなかったのかよ」
今さら驚くタカノに、俺は呆れ顏でため息をついた。
意外とシュウの仕事内容知られてねぇんだな。
まぁ、異世界に行けるのは一握りだし、あいつもサラッと行って帰ってくるから、そんなもんか。
外仕事が多く、目立っている俺は少し驚いた。
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