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無事食事を終え、目的のサイジ工場へと着いた。
「見学コースはこちらになります。
5分後の出発となりますのでお早めにこちらへお集まりくださーい」
キレイ系のお姉さんが旗を振っている。
「……なんで刀鍛治屋にガイドのお姉さんがいるんすか? 」
「俺に聞くな」
ツアーで案内された場所は、ガラス張りで、中の刀を作る様子が見れた。
「違うっす!
オレの求めていたのはこんなんじゃないっす!! 」
うん。俺もお前の仕事よく知らないけど、これが思い描いていたのと違うってことくらいはわかる。
中で刀を作っていたのは機械であった。
俺は涙目のタカノの肩を叩いて同情する。
俺はガイドのお姉さんに見えるように手を挙げた。
「質問。
俺ら手作業で作るの見たくて、観光に来たんだけど、そういうとこないんですか? 」
「ありますよ。
むしろ、ここが革命的であって、他には真似できません」
お姉さんは誇らしげに答える。
いや、そーいうの聞きたいんじゃなくて。
「じゃあ、この国一番の腕前の刀鍛治紹介してもらえますか? 」
「そういったことは、ツアーの最後でよろしいでしょうか? 」
この工場に興味を示さないのが不満なのか、お姉さんに表情が少し硬くなる。
「わかりました」
俺がすんなりと引き下がったことで、お姉さんは再び笑顔で設備の説明を始めた。
「コウ兄、やけにあっさり引き下がったっすね」
タカノが小声で口を尖らせている。
「あんなツアーガイドが紹介できるわけないだろ。
有名どこの道案内はできるだろうが、こっちが求めてるのはもっと強いコネクションだ。
後でここのオーナー引っ張り出して、そいつに紹介してもらう。」
そう言ってニヤリと笑う。
「……悪い顔っす。
でも、どうやってオーナーを?」
「俺が昼食、少ししか食わなかったこと覚えてるか?」
「覚えてるっすよ。
たくさん食べないと不運がまた起こりそうだなぁって……まさか!?」
「こんなに凶器がたくさんある中で、不運が起きないわけねぇだろ」
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