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この急な話が舞い込んだのは3ヶ月前のことだ。
俺、コウ(25歳)はこの村、というかこの惑星を束ねる長(おさ)に呼ばれ、長の屋敷に来ていた。
「コウ。急で悪いんだが、旅の仕事だ」
銀色の長い髪が風に揺れる。
中世的な顔立ちで、美青年と言いたくなるが、長は女だ。
歳は1つ下で24歳。
切れ長の目を細めると、女性らしさが出て思わず見惚れてしまう。
だが、中身はとんだ食わせ者。
現に今も、長にちっとも悪びれた様子は無い。
「は……いつですか? 」
「3ヶ月後だ」
「はぁぁああ!? 」
思わず声を荒げる。
いや、だってマジで3ヶ月とか無理だし。
「いやいや、普通準備に半年以上かけるじゃないっすか! そもそも何でそんな急なんですか? 」
「見つけた異世界と空間を繋げやすいのが、残り3ヶ月ほどらしい。まぁ、お前なら大丈夫だろ。
問題はタカノだが 」
俺なら大丈夫……か。
ちょっと嬉しい。
って、あれ? タカノ?
「確かタカノは追試組のはずですよね? 」
異世界へ行くには、暗記力テスト、言語マスター力テスト、武術テストなどいくつかのテストを全てクリアしなければならない。
あいつは、最後の危機察知テストで不合格だったはず。
「そこは3ヶ月あれば合格できるだろ。
後は、異世界の情報を3ヶ月でどこまで詰め込めるかなんだが……とりあえず資料を見てくれ」
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