再びのはじまり。

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はじめまして。 と、いうのかどうかわかりませんが。 ロシア系日本人の来島イングヒルトといいます。 さてと、この話なんですが。 『きっかけというもの。』に登場した、馬渕上総さん、鷹司蘭さん、そして、少し出演してくれた桐生悦子さんのもうひとつの話です。 ただし、桐生悦子さんは、登場は説明だけです。 今回の主人公は、上総さんと蘭さんの話になります。 そして、このナレーション担当はイーちゃんこと、来島イングヒルトが不承、担当させていただきますのでよろしくお願いいたします。 さて。 舞台は1970年の五月下旬からスタートします。 二人は神戸市須磨区の、県立須磨第一高等学校の三年生になっています。 この高等学校は、兵庫県下では第一位の進学校。 したがって、三年生の上総さんと蘭さんも受験勉強に備えなければなりません。 上総さんと蘭さんは、国立北近畿大学を第一位志望にしていました。 そして、初登場となる、宝塚に住んでいた頃の向かいに住んでいた、幼馴染みの木村良一さんも同じ大学に進もうとしています。 この三人は、学年で1位、二位、三位の学年成績を占めていました。 1位が木村良一さん、二位が蘭さん。そして三位が上総さんです。木村良一さんは、高校で、上総さんと再会しました。 なんでも、お母さんと一緒に須磨区に中学の頃、引っ越して来ていたみたいで、入学式のクラス発表の掲示板で、その名前を発見したそうです。 上総さんははじめ同姓同名の人違いかな?と、思ったそうです。 なぜなら、良一さんはまだ宝塚にいると思っていたからです。 掲示板の前でそうこう考えていると、後ろから声をかけられました。 振り向けば懐かしい、小学五年生の頃まで一緒に学校に通学した良一さんが立っていました。 上総さんはその時、呆然と立ち尽くしました。 無理もありません。上総さんは両親の事故の時以来、良一さんとは会っていなかったからです。 上総さんはあの事故の日以来、宝塚の昔の自宅には戻ってはいません。 なぜなら、上総さんと両親の思い出が詰まった家は、借金の返済のために他人の家に渡ってしまったから。 あの、忌まわしい大人たちに受けた暴力と罵声を浴びせられた辛い記憶を思い出したくなかったから。 そして、大好きなお母さんとお父さんの大切な思い出を思い出したくなかったから。思い出すと、くじけそうになるからだそうです。 そして、新しく歩んでいきたかったから。
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