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本棚に追加「上総さん、大丈夫?」
上総さんが落ち着いたの確認してから、抱きしめるのをやめ、上総さんを心配そうに蘭さんは見つめます。
「う、うん・・・・」
力なく、返事をする上総さん。
「ご、ごめんね。いきなりだったから、あのときの事、思い出しちゃって・・・・。ありがとう、もう、落ち着いたから大丈夫・・・」
上総さんは、身だしなみを整え、無理して、少々ぎこちない笑顔を蘭さんに向けます。
「そう・・・」
蘭さんはそれを見て、少し心配しますが、フゥー、と少し息を吐き、安心した笑顔になります。
「上総さん、あの人って、宝塚に住んでいた時の・・・?」
「うん・・・・。お向かいに住んでた、木村良一って子。私が、お洗濯や、炊事を習った木村のおばさんの息子・・・・」
「そう、それであのときの事が・・・」
二人は無言になります。
上総さんは、大好きな両親のために、結婚記念日に旅行に行ってほしいため、留守中に自分で家の事が一人でできるように、一生懸命、当時、宝塚に住んでいた上総さんの家のお向かいの木村のおばさんに、それを教えてもらったそうです。
だけど、悲しい事に、上総さんのご両親はフェリー事故で他界されました。
上総さんは、旅行にすすめた自分が悪いと思い込み、自責の念にさいなまれていたそうです。
だけど、神戸の須磨に移り住み、蘭さんや、園長先生夫妻、蘭さんのお母さんに励まされ、その悲しみを乗り越えていこうと、精一杯努力して、その悲しみを克服しました。
しかし。
あのときの忌まわしい虐待された思い出は、上総さんの心の深いキズとなり、上総さんの心に残ってしまいました。
「良一、私の幼馴染みなの」
気を取り直し、上総さんは蘭さんに説明をはじめます。
「幼馴染み?」
「うん。良一はね。私と同じ病院で、同じ日に生まれたの」
上総さんは、懐かしそうに、空を見上げて話します。
「私、良一のお母さんが勤めている産婦人科の病院で生まれたの」
「良一さんのお母さんの?」
「うん。良一のお母さん、看護婦(当時は看護師さんは看護婦さんと読んでました)さんをしていてね。それで、良一のお母さんがうちのお母さんに薦めてくれて。出産するときはうちの病院でって。一緒に入院して、お母さんに色々教えてくれたらしいの」
さっきとは違い、思い出を嬉しそうに語る上総さん。
蘭さんはその表情を見て少し安心して、上総さんの話を聞きます。

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