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――――私を、殺して。
そう、少女は言った。
吹きすさぶ荒野の風にさらされたその身体は、美しかった髪も、あの日見た笑顔も、まるでその砂塵に埋もれてしまったかのように、ひどく汚れていた。
――――バカなこと言うな! そんなこと……できるわけないだろ!
その言葉を向けられた少年は、その唇から血がにじむほどに、いや、それでも足りないと言わんばかりに、歯を食いしばる。
――――でも、もう逃げられないよ。私が死ねば、彼らはあなたまで追っては行かないわ。
少女は諭すように、しかしどこか儚く、微笑みを浮かべる。だが、彼女がそう言ってほほ笑むほどに、そしてその笑顔が美しければ美しいほどに、少年の心には悔恨の灰が降り積もっていく。
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