3月2日、アクアリウムで

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 唇を噛んで水槽を見上げる私に、真由は静かに話し始めた。  「ジンベイザメとコバンザメの関係は『片利共生』って言われてるけどさ、実はコバンザメがジンベイザメについてる寄生虫を食べてあげてるみたいなの。だから、本当は『相利共生』なんじゃないか、って説もある」  「……コバンザメもジンベイザメの役に立ってるってこと?」  真由の細い指が、そっと私の指を絡め取った。  「うん、ジンベイザメにもコバンザメが必要なんだと思うよ」  ーーねえ、真由。 私がずっと真由を必要としていたように、あなたにも私が必要だった?  こんな私でも、真由の力になれたことがあったの?    そう問いかける代わりに、私は真由と繋いだ手にぎゅっと力を込めた。  「東京に行く決心がついたのは、梨沙のおかげ。いつも一生懸命な梨沙を見ていたら、私も頑張ろうって思えたの。 私、夢を叶えてまた必ず梨沙に会いにくる。だから、私のこと忘れないで」  私はもうこれ以上、溢れる涙を堪えることが出来なかった。  「忘れるわけない。忘れられるわけないじゃないっ」  人目も忘れて泣きじゃくる私を、真由がそっと抱き寄せた。  「大好きよ、梨沙。ここであなたと出逢えて本当に良かった」  「真由……、私も。ずっと真由と一緒に過ごせて幸せだった」  私から離れていこうとする大好きな人の香りを、この優しいぬくもりを、決して忘れてしまわないように。  「今までありがとう、真由」  私は真由の体をきつくきつく抱きしめた。 Fin
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