3月2日、アクアリウムで

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 あれは、小5の春の遠足の日。  「あら、渡辺さん一人なの? 彼女隣にいいかしら」  大型バスの後方に一人で座る私のもとに、隣のクラスの宮原先生が連れてきたのが真由だった。  「どう……ぞ」  同じクラスになったことは一度もないけれど、私は真由のことを知っていた。  陶器のようになめらかで白い肌、少しウェーブがかかった茶色くて長い髪に黒目がちな大きな瞳。  まるで外国製のお人形みたいに綺麗な真由は、この学校の有名人だった。  ずっと、綺麗な子だなあ、って思っていた。  「綿貫 真由です。よろしくね」  「……渡辺 梨紗です」  「ふふ、出席番号一番最後どうし、仲良くしよ」  こんな子と友達になれたら、嬉しいなあって。  その日以来、まるで綻んだばかりの大輪の花のように鮮やかに微笑む真由から、私は目が離せなくなった。
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