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頭上に架かるライトブルーのトンネルを色とりどりの魚が泳いでいく。
地上を歩いているのに魚のお腹を覗いてるなんて、何だかちょっと不思議な気分。
でも私は、すぐに魚を見上げるのを止めて、私の少し前を歩く真由の綺麗な横顔に視線を戻した。
ちゃんとこの目に焼き付けておかなければ。
あと一月もしないうちに真由は行ってしまう。
そう思うだけで、悲しくて胸がいっぱいになった。
「きれいね、梨沙」
そう言って真由はまた私に微笑むけど、私はどうしても真由に笑顔を返すことができない。
全長11メートルのトンネルを抜けたら、長いエスカレーターに乗ってアクアリウムの最上階へと登る。
「ちょっと待ってよ、梨沙」
私を呼び止める真由には構わず、間抜けな顔のカワウソやオオサンショウウオを横目に、私は幾つもの水槽を足早に通り過ぎた。
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