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6階から4階は、太平洋を模した巨大な水槽で繋がっている。
一人でガラスの中の海をぼんやり眺めていると、奥の方からなんだか美味しそうな魚の群れが泳いでくるのが見えた。
「さんまか、イワシかなあ、あれ」
そうぽつりと呟くと、私の隣に真由が並ぶ気配がした。
「あれはさんまよ。キラキラしてて綺麗ね」
「……さんまの塩焼き食べたくなっちゃった」
「梨沙ったら、相変らず食いしん坊ね」
ようやく私に追いついてホッとしたんだろう。私の返事に、真由はまたあの日と同じ花のような笑顔を見せた。
大好きな真由の笑顔に、寂しさとはまた別の感情が胸の奥底から溢れ出しそうになって泣きたくなる。
その時、目の前の水槽を一匹の大きなジンベイザメが横切った。
悠々と泳ぐその姿に、私と真由は言葉も忘れてしばし見入った。
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