くればいいのに

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 「ばかね、梨沙。私が気づいてないとでも思ってるの?」  一歩、また一歩と真由が私との距離を詰める。  今すぐここから逃げ出したいのに、真由の瞳に魅入られた私は、まるで金縛りにでもあったかのように動けない。それまで心地よく感じていた日陰を通る風が、汗に濡れた私の体を冷やし体温を奪っていく。  「本当は全部知ってるのよ。私のかわりに、男の子たちに身体を捧げてたこと」  真由は私のすぐ目の前に立つと、細く整えられた爪先で私の頬をつうっと撫でた。 身体からは血の気が引いているのに、真由が触れた部分だけがカッと瞬時に熱を持つ。  心臓が、早鐘を打つ。  「梨紗は私のこと、ずっと守ってくれてたのよね?」  私は、息をするのも忘れ、その場に立ち尽くした。
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