[ Ⅰ ]

11/11
前へ
/25ページ
次へ
 代わりに、嫁に電話した。  彼女を捜す為に。  嫁は、お袋に呆れながらも俺に同意してくれて、出来る限り捜そうと言ってくれた。  だがしかし、「でもほぼ不可能だとも思うわよ」と、付け足して。 俺も、二度と会えない予感はした。  ──それ以来、俺と嫁の予想通り。  地元を捜しても捜しても会えない。  嫁が業者に頼んでも、埒が明かなかった。  当然だ、名前も知らない。  あの時に聞いていても、きっと、教えてくれなかっただろう。  到底、捜しきれるものではなかった。  ──あれから、三年目の夏。  彼女とすれ違った駅前通りに、俺はまた立っていた。  街路樹の葉が増えた、  石畳が煉瓦になった、  そんな程度にしか、変わってないのに。  彼女は見つからない。  あの時の様に、つくつく法師が煩いだけだ。  彼女が言った言葉を、忘れられない。  忘れる事が出来ない。  忘れてはならない。  ──ただ。  俺は未だ、お袋ごと。  彼女達に恨まれているのかと思うと。  申し訳なさと、許しを乞いたい想いで。  苦しいほどに内臓が、、、気持ち悪い。  
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加