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斜に向き合った彼女は、細身の田舎美人だった。
その細い身体に、何かをみなぎらせて、俺を見据えている。
そして言葉は紡がれた。
「あんたの母親、葬儀屋勤めだよね」
「…そうです、はい」
やはり、お袋への苦情だ。
俺は芸能人の立場からしても、なかなか反論しにくい。
そう苦虫を噛んだ。
「だったら普通、弁えてるよね?
そっちは毎日の仕事でも、こっちは旦那だろうと友人だろうとご近所さんだろうと、残されたその人の、生涯一度の悲しみだって事くらいはね?」
「──……」
腹が、背筋が冷える。
──お袋。
そんな時に、何を言ってしまったんだよ。
「そんな式が済んで、移動する時。普通は何も言えないよね。あっても労りや慰めの言葉だよね。
だけどあんたの母親、私の母に、すげぇ事言ったんだよ」
──ぞくり。
「“次はあんたの番だね”」
「はあっ!?」
「私の母と、あんたの母親、友達でもなんでもないよ。ちょっと葬儀のセールスされたくらいの関係よ。
てか友達なら余計言わないよね、そんな事」
「何、あんたの母親」
「次に死ぬのが私の母だと、真っ正面から言ったんだよ」
俺の目の前が、
羞恥と申し訳なさで、
真っ暗になった。
「どう思う? テレビに出てる、息子さん」
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