[ Ⅰ ]

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 斜に向き合った彼女は、細身の田舎美人だった。  その細い身体に、何かをみなぎらせて、俺を見据えている。  そして言葉は紡がれた。 「あんたの母親、葬儀屋勤めだよね」 「…そうです、はい」  やはり、お袋への苦情だ。  俺は芸能人の立場からしても、なかなか反論しにくい。  そう苦虫を噛んだ。 「だったら普通、弁えてるよね?  そっちは毎日の仕事でも、こっちは旦那だろうと友人だろうとご近所さんだろうと、残されたその人の、生涯一度の悲しみだって事くらいはね?」 「──……」  腹が、背筋が冷える。  ──お袋。  そんな時に、何を言ってしまったんだよ。 「そんな式が済んで、移動する時。普通は何も言えないよね。あっても労りや慰めの言葉だよね。  だけどあんたの母親、私の母に、すげぇ事言ったんだよ」  ──ぞくり。 「“次はあんたの番だね”」 「はあっ!?」 「私の母と、あんたの母親、友達でもなんでもないよ。ちょっと葬儀のセールスされたくらいの関係よ。  てか友達なら余計言わないよね、そんな事」 「何、あんたの母親」 「次に死ぬのが私の母だと、真っ正面から言ったんだよ」  俺の目の前が、  羞恥と申し訳なさで、  真っ暗になった。 「どう思う? テレビに出てる、息子さん」  
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