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心臓が握り締められた感覚だった。
どうしよう、どうしたらいいんだ。
お袋、あんたどんだけだよ。
「葬儀屋さんて、次の葬式を予言して侮辱するのが仕事?
違うよね?」
「それともあんたの母親だけ?」
「あの科白が、セールスを断った事への報復なら、葬儀屋失格だよね」
さしもの俺も、何も言えなかった。
顔が青ざめているのが、解るくらいだ。
彼女は黙る。
蒼白な俺を、楽しむかの様だ。
「あ、あの、母が、大変な失礼を申しました。
どうも昔からの悪い癖で、あの、謝って済む話ではありませんけど、 えっと、あの──」
「金も謝罪も要らないよ。
三面記事に売ったりもしない」
俺を遮って、薄い笑みを浮かべながら、彼女は言った。
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