見えない恋人

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その日は、雨が降っていた。 梅雨の湿気た空気と雨の匂い。 透明なビニール傘をさしている私。 歩道橋の上から朝の通勤ラッシュで 混雑している車を見つめる。 なんだかプリマドンナになった気分。 車の中の人がみんな、私を見てるみたい。 羨ましそうに、妬むように。 徒歩には渋滞なんてものがないもの。 きっと、こんな風によそ見しながら歩いてたら、危ない。 だけど何かあれば、きっと。 私はいつもの制服で、 いつもの時間に、 学校へ向かう。 小さな雨粒がひたすら街を濡らしてく。 車も、人も、ビルも、信号も、地面も。 私の「目に入るもの」すべて。
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