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誰か、私を止めて。
まだ日の昇っていない学校の屋上。敷かれた芝が霜をかぶったまま、私のことを嘲笑う。
太陽の光に当たれない霜は、輝くことができない。
重いまぶたを擦りながら、もっとゆっくり眠ればよかったなあ、なんて考えながら息をつく。マフラーの向こうにはみ出た白い息は、ゆらりと揺れて空気に溶けていった。
芝の敷いていない場所に申し訳程度に造られたベンチに、学校指定の鞄を置く。いろんなところにぶつかって掠れた『紺野』の文字が、どっかり座った。
ひんやりした風に当たりながら朝焼けが来るのを待っていると、屋上の扉がそっと開いた。
今は二月。ガラス製の扉が、暖かい校舎の空気と冷たい外の空気の差にびっくりして白く染まっていく。
私はその向こうにいる人影を見て、少しだけ唾をのみこんだ。奥歯を噛み締めて鼻で深く息を吸って、吐く。鼻がつんと痛んだ。
「こん、ごめん、先生に呼ばれてさ……」
“ん、いいよ。こっちこそいきなりごめん、呼び出したりなんかして”
ふわふわしたポニーテールを揺らしながら早足でこっちに向かってくる。膝のきゅっとすぼんだ箇所がギリギリ見えるぐらいの丈のスカートが、ひらひらと舞った。
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