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「それで、話って?」
私の前まで来ると、もともと大きくて丸い瞳をくるんとまるくして私を見上げる。さっきまで暖房の効いたあったかい部屋にいたからか、頬がほんのり桜色になっていた。
いつもなら平気でつまんだりするその頬に、触れたくても触れられない。
私を見て不思議そうな顔をする、そんな何気ない変化にすら胸がはち切れそうになって、愛しくて愛しくてたまらなくて……
マフラーの奥に隠れた唇を噛んだ。頬が緩んだことを、悟られてはいけない。
ぐっと息を吸うと、鼻の奥がつんといたんだ。さっきのよりもずっと痛くて、思わずしかめっ面になる。
「あー……あのさ……」
肩を越すストレートヘアも女子高生にしては少し高い身長も、スカしたような切れ長の目も、今は自分の味方をしてくれているような気がした。
“好き”
これまでどんなことがあっても静かにこらえて、ひたすら黙って心の中に閉じ込めてきた想いの閂を外す。
朝日が上ってきて、薄暗かった屋上にわずかな光が差し込んできた。
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