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「……え?」
信じられないと言いそうな、そんな表情。はじめは私を見るだけだった瞳が、じわじわと大きく開いていく。
え、と言ったきり閉じることを忘れた口からは、私が覚悟した以上の言葉が飛び出した。
「……そっか。そっち系なんだ」
掠れたような声が、空気と一緒に喉から押し出される。いつからなの、と聞かれて、一年の夏からだということを素直に話した。
「……じゃあ、これまでずっと、私をそういう目で見てたってこと?」
否定的な言葉が見つからない。
否定を肯定して、また否定される。
「じゃあ私に肩を組まれる度に、ハイタッチをする度に、抱きつかれたり抱きついたりする度に……意識してたんだ?」
少しずつ居たたまれなくなって、私は目をあわせていられなくなる。
無言は一番説得力のある肯定だ。
いつも可愛らしいまんまるな目を少し細めて、口の端をひきつらせたまま控えめに私を覗き見て一言。
「……気持ち悪……」
屋上を優しく包む朝焼けが、私たちの影を作った。
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