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きゃー、おはよー、とはしゃぎながら何でもないように抱きついてくる相手に、マフラーをはずしながらはいはいと流すように返事をした。
『……気持ち悪……』
平静を装うのは意外と難しい。
夢で見たあの表情が頭にはりついて剥がれない。可愛らしくゆれるポニーテールに、悪意があるように思えてしまう。
だめだ、意識したら負けだ。
毎日早くくるからかもうすでにだいぶあたたかくなっている。たまに当たる手や足があたたかくて、さっきまで外にいた私の四肢は痺れたようにじわじわした。
ほんのり桜色のほっぺ。
夢では伸ばせなかった手も、今はなぜか平気だった。マフラーを机の上に置いて、爪の先までキンキンに冷えた両手でほっぺをつつむ。
「ぎゃああ冷たいぃぃ!! こんの鬼!! 海坊主!!」
雪女でしょ、とツッコミながら、二人で飽きるまでそうやってばかしてはしゃぐ。
首元に手を入れからかうと「ひえぇぇ!!!」と鳥みたいに叫んでばたばたと暴れて、顔を見合せ笑う。
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