第1章

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 そこはそれ。帰宅するとき栗桃さんに気付かれないように 消毒、消臭スプレー、着替えまで用意する徹底ぶり。 これで栗桃さんが嫉妬するなら、道端で猫を撫でることも 叶わないではないか。だからばれていない。所詮は猫だ。  ばれていないのだろうか?  インターネットで可愛い猫さん達の写真をシェアしまくる。 白いのもいいなあ。3匹全部並んでお風呂もいいなぁ。 私も栗桃さんを撮影しまくって、猫写真家として芸術を 志すのもいいなぁ。芸術の秋だしね。えへ。さてコーヒーを。  振り向いた、襖の隙間から栗桃さんがこっちみてる。 近寄ってくる甘えてくる、いつもの愛らしさが無い。 まるで私の無防備さを、調べてるような鋭い眼差し。  い、いや。栗桃さんはイケメンだし。♀だけど。イケメン! でも動く気配もなく、ひたすらに私を眺めている。調べている。 目を逸らせば命は無いと思え。そういう威圧感で動けない私。  猫カフェの子たちが坂東武者の、豪傑だと例えるならば。 今そこにいる栗桃さんは、忍者というか暗殺者に近い。  ゆっくり栗桃がこちらに近寄ってくる。私の膝を段に使わず PCのキーボードの上に悠々と座る。堂々たる威厳がある。  よく見てみたら、カナチョロを咥えていた。 や、やめてください。本当に。その子にお慈悲を。逃がして。 だが栗桃の目は私への土産。違う。「明日はお前だぞ?」  まるでPCをマスターしているかのように、電源を切って 栗桃さんはこっちを見据えた。ひぃ!イケメンの睨み怖ぇです!  すかしてなだめて、遊んでおやつで。やっと寝てくれた。 疲れた。よく考えたら気のせいだろう。遊びたかっただけだ。 明日も栗桃さんといっぱい遊ぼう!新しい玩具も買ってこよう。 私と栗桃さん(♀4歳イケメン)の、毎日が恋する私達の芸術!  翌朝。枕元に猫カフェのスタンプカードが引き裂かれていた。 気のせい、気のせい、気のせい、気のせい、気のせいなんです。  そうだよね?
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