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「秘密の調合、魅惑のスパイス……、よし、ここでアレを投入して……と」
黒一色の壁。床に置かれた三ツ又の手燭がゆらゆらと室内を照らす。
蛍光塗料で描かれたマジックサークルの中央に据えられた煮立った大鍋からは水蒸気が髑髏の形を模して宙に立ち上っていく。
毒々しい赤色の中身を覗き込み、魔女協公認の黒の尖り帽をしっかりと被り直した少女はふるふると震える。
決して寒いわけでもなければ、涙を堪えている訳でもない。
「ふぁーっはっ、出来まひた、遂に!
遂に完成ひたですっ!
後はこのまま小瓶に入る量まで12時間煮詰めるだけ……うっかり10倍量で作っちゃったけど、濃縮させれば同じ1本。
これで濃厚な、そう、濃厚な……はう、濃厚なキィ~ッスが……はひゅはひゅげひひですっ」
ふんぞり返った瞬間、烏のような魔女クロークのフードがはらりと後方に流れた。
赤いリボンで留められた金の尻尾が二つ、仲良くふわりと揺れる。ぱっちりとしたエメラルドを思わせる瞳が燃える野望にたぎる。
「……ふごっ」
あまりに興奮しすぎたのだろう。筋の通った鼻からとろーりと赤い欲望が垂れてしまった。
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