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「ひぃ」
満員の電車内、身動きがとれない中で美奈（みな）は小さな悲鳴を上げる。
首都圏でも有数の混雑を誇る西京線、比例して痴漢の数も多く、華の高校二年生の美奈もまたその餌食となっていた。
幼少期から気が弱く、自分の意志を強く持てない彼女に犯罪者を捕まえるなどという選択肢はとれず、ただただ堪えるのみ。
痴漢からみれば格好の的だろう。
事実、毎日のように彼女は痴漢被害にあっていた。
その日も乗車してすぐに痴漢に目を付けられ、学校の最寄り駅まで恐怖に涙を堪えながらの登校になるはずだった。
そう“だった”なのだ。
「おい、ジジイ！」
突然の声とともに野太い男性の悲鳴が車内に響く。
振り返れば、中年のおじさんが、美奈と同じくらいの少女に手を背中に回されて拘束されていた。
先ほどまでは無関心だった周囲の乗客が好奇の目を向ける。
少女はイライラした様子も隠そうともせずに舌打ちする。
（こ、こわい）
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