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痴漢はもちろん怖い。
しかし目の前の少女もまた怖い。
茶色く染まった背中まである長い髪、色黒の肌、濃いメイク、典型的なヤンキー少女。
校則を遵守して、一回も染めたことのない短く艶やかな黒い髪に、色白な肌、ほぼノーメイクの美奈とは正反対な少女。
(かかわりたくない)
美奈の気持ちは誰もが思う気持ちだろう。
「間もなく沼袋(ぬまぶくろ)ー、沼袋。お乗り換えは……」
駅への到着を知らせるアナウンス。
ほどなく、電車は駅のホームに滑り込み、そのドアを開ける。
(降りる駅だ)
「おい、ジジイ!駅員に突き出してやるかんな。」
少女がおじさんを掴んだまま降りようとする。
最後の抵抗とばかりにジタバタともがくおじさんの太った脇腹に、少女の鉄拳がめり込む。
「チッ、重いなコイツ。あ、お前も……」
「あ、あの助けていただきありがとうございました!わ、わた、わたし学校あるのでしつ、失礼します」
開口一番、少女に頭を下げると、美奈は人で溢れる長いホームを駆け出し、もみくちゃにされながらもその場から離れた。
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