4人が本棚に入れています
本棚に追加
「知らないってお前」
「私は小さい頃に捨てられて、施設で育ったの」
「そっか、お前も」
「違うの。それでも私は友達もいるし、親代わりの人だっているわ。」
「そりゃ良かったな。なら私よりよっぽど幸せものだ」
「だから、そんな言い方しないでよ。知らないなら知ろうとすればいいじゃない。私が教えてあげるから」
そういうと美奈は不良少女に抱きついた。
「ちょっ、おま、人が見てる」
「お前じゃない、美奈!あなたは?あなたはなんて言うの?」
「……伊那」
「そっか。よろしくね伊那ちゃん」
まだ涙が残るものの、笑顔で自分を見つめる美奈にまた伊那は顔を赤らめていた。
久しく感じなかった、自分を好奇以外の視線で見る瞳。
今まで感じたことのない感情がもやもやと胸の中で暴れまわる。
「うん」
伊那が小さく頷くと、美奈は再び抱きついた。
fin
最初のコメントを投稿しよう!