第1章

8/8
前へ
/9ページ
次へ
「知らないってお前」 「私は小さい頃に捨てられて、施設で育ったの」 「そっか、お前も」 「違うの。それでも私は友達もいるし、親代わりの人だっているわ。」 「そりゃ良かったな。なら私よりよっぽど幸せものだ」 「だから、そんな言い方しないでよ。知らないなら知ろうとすればいいじゃない。私が教えてあげるから」 そういうと美奈は不良少女に抱きついた。 「ちょっ、おま、人が見てる」 「お前じゃない、美奈!あなたは?あなたはなんて言うの?」 「……伊那」 「そっか。よろしくね伊那ちゃん」 まだ涙が残るものの、笑顔で自分を見つめる美奈にまた伊那は顔を赤らめていた。 久しく感じなかった、自分を好奇以外の視線で見る瞳。 今まで感じたことのない感情がもやもやと胸の中で暴れまわる。 「うん」 伊那が小さく頷くと、美奈は再び抱きついた。 fin
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加