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「ボクを助けられるのは、神父様しかいないんだ」
そう言った悪魔の赤黒い瞳は潤んでいた。
私は目を閉じて考えた。そして神父服を掴む小さな手を取って言った。
「神父は万人の為に…例え悪魔であっても、私は助けます!」
「そいつは返してもらうぜ!」
吸血鬼と私は同時に走り出し、私は吸血鬼の心臓に短剣を突き刺した。
同時に、肩に激痛が走った。
「く…そ…」
そう言い残し、吸血鬼は砂の様に消えた。
私は短剣と共に倒れ、私のみが彼女に受け止められた。
仰向けにされた私の顔に、何かが落ちた。彼女の潤んだ瞳からポタポタと雫が落ちている。
彼女の顔を拭って上げたいのに、体に力が入らない。
「ごめん…なさい。ボクの所為で…吸血鬼に…」
どうやら吸血鬼に咬まれたらしい。そう気付いたと時に、喉に急激な渇きが襲ってきた。
…血が、欲しい。
「…うぅ…」
「あっ!血…血が欲しいんだね!?ボクのを…飲んで」
そう言って彼女は、自分の鎖骨に私の口を近づけた。
身体が熱くなる。
「いけません…絶対に…」
「でも、でも…」
私は顔を背けたが、彼女はそれでも私の口元を首によせる。
「お願い…咬んで…じゃないと、死んじゃうよ」
吸血鬼は血を飲んだ相手を、【契約者】として一生傍に置くものなのだ。
今この場に彼女しか適合者はいない。
もし、彼女の血を飲んでしまったら、私は彼女と共にいなければならなくなる。
彼女の事だからきっと教会にいる、と言い張るだろう。
「いけません……いけま…っんん!?」
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