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悪魔を助けた事を、神は許してくれるだろうか。
だが、私は既に神父として禁忌を犯している…こうして悪魔に抱かれている事もそうだが、一番の禁忌は、今、私の唇と悪魔の唇が重なっている事だ。
産まれて初めての女性の…唇。優しくて、柔らかくて…悪魔なのに心を奪われそうだった。
「っんぁ……何を、するんですか。人がせっかく、渇きに耐えているのに…」
「だってボク、神父様が可哀相で…それでいて愛しくて…もう、苦しまないでほしくて…」
「苦しまないと…神父でいられなくなります。…既に、禁忌は犯していますが…」
「もう、いいよ…苦しまなくて。ボクだけが愛してるんだから…ボクだけを愛してよ…」
嗚呼、『愛してる』なんて言葉を聞いたのは、何年ぶりだろう…。
神父になってから、感謝の言葉を貰うことはあったが、愛の言葉を貰うことは無かった。
それだけで、罪だった。
私は彼女に支えられながら床に座り、彼女の方に向いた。
「神父と悪魔ですが…神が許してくれるでしょうか?」
私が掠れた声で言うと、彼女は濡れた瞳で微笑んだ。
「神が神父様を許してくれなかったら、ボクが神を許さないよ」
そう言った彼女は、もう一度私の唇を奪い、私もそれに答えた。
そして、ゆっくりと口を放してから、彼女の白い首筋に噛みついた。
「うっ……つっ…」
「……んっ………はぁ…美味ですね。悪魔の血が、こんなにも美味しいと感じるとは…」
「契約完了、だね…。これでボクは神父様のモノ…」
神よ…情けないが、私を救ったのは悪魔だ。
そして、私はこの目の前にいる悪魔の主となった。
神よ…貴方はそれでも、私を神父として認めてくれますか?
私たちを、見守っていてくれますか?
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