矜恃凪

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規則正しく音を刻む歯車。 疎らに付いた砂埃と血糊。 手首に付けられたモーターは、今日も正常にその役目を果たしてくれた。 口に咥えたペンライトで照らしながら部品を一つずつ外し、丁寧に拭いては床に敷いた脱脂綿の上に並べる。 毎日3度もこの作業を繰り返す事にどれほどの意味があるのか。 それは答えを推量する事すら出来ない疑問であった。 この機械を造ったのは この身体の仕組を造ったのは 自分ではないから。 それでも自分は生きている。 「命」を護るこの小さなモーターは、つまり自分自身であって。 同時にそれは戦場に身を置く自分の誇りでもある。 凪いだ矜恃を保持する為なら 意味など無くても価値は容易に見出せるのだ。
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