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「……」
「お、おかえりリリー。どうかしたのか?」
「何でもないわ。ちょっとね、ナンパされちゃって興醒めしただけ。疲れたわ、帰りましょ?」
ディランの元へ帰って早々、リリーは何事もなかったようにそう言った。
「いや、良いけどさ。あ、じゃあ俺は……」
「心愛ちゃんがまだ戻ってきてないでしょ?送ってあげてちょうだい」
「リリーは?」
ディランの心配そうな声に、リリーはくすりと笑ってみせた。
「やだ、あたしもう二十歳よ。子供扱いされなくったって、一人で帰れるわ」
そう言い残すと、ディランの返事を待たずに歩き出す。
一人で帰りたい気分でもあった。
「……はぁ」
なんであの時、手を振り払ってしまったんだろう。
リリーは家に帰りながら、一人考えこんだ。
いつの間にか家に辿り着いていたほど、考え込んでしまったようだ。
「ヴァン……」
名前を呼んでも彼はいない。
リリーはシャワーを浴びてネグリジェに着替えると、ぽふんと布団に沈み込む。
「あたし……なんで……」
なんで手を振り払ってしまったのか、わからないわけではない。
昔からそうだった。
“触らないで”
そう言っては手を払いのけ、一人で生きてきた。
孤独に生きることに抵抗も、ましてや寂しかなど感じなかった。
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