第一章

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「……」 「お、おかえりリリー。どうかしたのか?」 「何でもないわ。ちょっとね、ナンパされちゃって興醒めしただけ。疲れたわ、帰りましょ?」 ディランの元へ帰って早々、リリーは何事もなかったようにそう言った。 「いや、良いけどさ。あ、じゃあ俺は……」 「心愛ちゃんがまだ戻ってきてないでしょ?送ってあげてちょうだい」 「リリーは?」 ディランの心配そうな声に、リリーはくすりと笑ってみせた。 「やだ、あたしもう二十歳よ。子供扱いされなくったって、一人で帰れるわ」 そう言い残すと、ディランの返事を待たずに歩き出す。 一人で帰りたい気分でもあった。 「……はぁ」 なんであの時、手を振り払ってしまったんだろう。 リリーは家に帰りながら、一人考えこんだ。 いつの間にか家に辿り着いていたほど、考え込んでしまったようだ。 「ヴァン……」 名前を呼んでも彼はいない。 リリーはシャワーを浴びてネグリジェに着替えると、ぽふんと布団に沈み込む。 「あたし……なんで……」 なんで手を振り払ってしまったのか、わからないわけではない。 昔からそうだった。 “触らないで” そう言っては手を払いのけ、一人で生きてきた。 孤独に生きることに抵抗も、ましてや寂しかなど感じなかった。
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