第一章

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「……そう、それ」 ディランは手を叩かれたにも関わらず、笑顔を浮かべたまま言った。 「リリーは昔からそうやって人に頼ることを嫌がるから。今回もそうだったんじゃないの?」 「は?」 「迷惑をかけちゃ駄目、頼っちゃ駄目。嫌われるから?」 違うよね。 ディランは優しい声音で言う。 「失うのが怖いんだ」 「……ディラン」 「俺だってそんな時期があったからね。わからないでもないよ」 ディランは微笑み、リリーの頭を撫でた。 リリーも今度は拒まずに、大人しくされるがまま。 「失うのは怖いでしょう。でも、ねぇ、もっと恐ろしいことはなに?」 「もっと恐ろしいこと……」 もっと、恐ろしいこと。 失うのを恐れて、拒むことよりも。 「今……」 今、会えなくなること。 その方がよっぽど恐ろしいのに。 「あたし……」 目からぼろぼろと雫が滴り落ちる。 「大丈夫、まだ間に合うよ。明日にでも会いに行ったら?」 ディランが告げる。 リリーは少し黙った後、小さく首を振った。
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