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「いいえ、今から会いに行くわ。思い立ったが吉日、でしょ?」
リリーは不敵に笑うと、涙の後が残る顔を拭った。
ディランがふっと吹き出す。
「それでこそリリーだ」
じゃ、俺はこれで。
ディランはそう言い残すと、そそくさと去って行った。
リリーはネグリジェを一度見直したものの、首をぶんぶんと横に振る。
着替えてる時間が惜しい。
早く会いたい。
一刻でも早く。
リリーはサンダルを履くと、ヴァンの家へと一目散に駆け抜けた。
近いとはいえ風のように走り、息を切らしながらもすぐに辿り着く。
「はぁ……」
一度深呼吸すると、トントンと扉を叩く。
「……はい」
寝ようとしていたのだろう、ラフな格好のヴァンが出てきた。
その顔は落ち着いていて少し憂いていたが、リリーを見た瞬間ぎょっとしたように目を見開く。
「リ、リリー!?」
はぁいヴァン、よる遅くに悪いわね。
準備していた言葉は喉から出なかった。
「……ヴァンっ」
リリーは手を伸ばすと、そこに居ることを確かめるようにヴァンに抱きついた。
「ちょっとリリー……」
「昼間はごめんなさい。あたし、どうかしてたわ」
視線を合わせないようにしていたリリーだが、意を決して上を見上げた。
彼はきちんとリリーを見てくれている。
「リリー……」
「あたし、勘違いしてたわ。人に頼ると嫌われちゃうかも、いつか居なくなる人に頼っちゃ駄目って……」
リリーはしっかりと彼の目を見つめる。
大きな赤い瞳は、少しうるんでいた。
「傍にいるくらいなら、離れた方がマシだって……そう思ってたの」
ヴァンはリリーをじっと見つめている。
リリーが言いたいことを待ってくれているのだ。
「でも違ったのね。あたし、そんなこと心配して離れるより……傍に居たいわ」
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