第二幕

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龍威は黙ってアクアの言葉を聞いていた。 やがて不意に立ち上がり、叫ぶ。 「キール、ちょっと来い」 しばらくして廊下につながる扉が開き、一人の男が入って来た。 金髪に紫の瞳。 王騎士の紋章が刺繍された上着を着ている。 龍威より二、三歳年上のようだった。 「…何ですか」 「何だ、じゃないだろう。伝言を頼まれてくれ。朝食は空愛と二人で食べるからこの部屋へ運べとな。お前とシーアの分もついでに頼んでおけ」 そこまで聞くと、キールと呼ばれた男はちらっとアクアを見る。 泣きべそをかいた後だというのに気がついたのか軽く目を見張った。 「おい…龍威。朝から女泣かすなよ」 「それもちゃんと説明する。さっさと行け」 砕けた感じで話すキールにアクアは驚いた。 「じゃあな、姫さん。また後で」 にやりと吸う形容詞がぴったりくる笑みを浮かべて部屋を出て行く男を唖然として見送るアクア。 「やれやれ…全くあいつは。気にしなくていい。兄弟同然に育った幼少時代のおかげか、私に対して遠慮がないだけだ。キルアイド=エディアスバイドと言ってな。隣の控えの間の住人だ。といっても、元は見習い僧兵だったので身分は低いがな」 ということは、龍威の側近ということになる。 兄弟同然に育ったということは乳兄弟と言うやつなのだろうかとアクアは考えた。
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