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キルアイドとシーアに現状を説明し終わる頃には、すっかり皿は空っぽになっていた。
「なるほどねぇ。で、姫さん、あんたどこの人?」
「どこのって…別に。先ほど言った通り、あちこち渡り歩いていますから…」
「アクア」
龍威の静かな声にさえぎられ、アクアは黙ってしまう。
本当のことは言えないと思っているからだ。
異世界の住人だ、なんて。
「悪いようにはしない。だから、私たちのことを信じて、何も隠さず話してほしい」
そう言われても、黙っているアクアを見て、龍威はため息をついて立ち上がった。
「そろそろ朝議の時間だ。行くぞキール」
「…ああ」
二人が出て行き、残されたシーアが食器の片付けを始める。
「どうぞ、姫様」
片付けを終えたシーアが紅茶もどき――いまだにこれが何のお茶だかアクアは知らなかった――を淹れてくれるまで、ずっと動かなかったアクア。
「姫様?」
「…私、龍威に嫌われましたか?」
思いもよらない言葉だったのか、シーアはしばらく考えるそぶりを見せ、明るく言う。
「大丈夫ですよ。陛下は今日は午前中で政務を終えられるので、午後からゆっくり話し合ってみてはいかがでしょうか?」
「ん…そうしてみます」
ほんのちょっと、気が晴れた気がするアクアだった。
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