第二幕

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昼食も同じく、四人で取った。 朝と比べて会話が少ないのは、主である龍威が不機嫌だったからだ。 まだ怒っているのだろうかと、アクアは心配になる。 「アクア。一息ついたら散歩に行こう」 「はい」 「動きやすい格好に着替えてきなさい」 「…わかりました」 シーアを伴って衣装小部屋へ行く。 動きやすい服、と言っても空愛の持ち物の中では、ごく内輪の者と会う時に着る、裾の広がっていないドレスぐらいしかない。 《番人》の制服だとものすごく動きやすいが――何せ戦闘服だ――それを着るわけにはいかないだろう。 「それでは行こう。キール、シーア後を頼む」 「おう、頑張れよ」 「行ってらっしゃいませ」 シーアの言葉はともかく、キルアイドの言葉はどういう意味だろうかとアクアは疑問に思った。 首をかしげつつも、龍威の後を追う。 昨日行った花園を抜けてさらに奥へ。 森に入ってしばらく進むと、古びた教会が見えてきた。 「ここはルグヴァインを祀る教会ですか?」 戦神ルグヴァイン。 戦場に在る、気高きものを愛し、その者には必ず勝利を与えるという、神。 ローアジャウルの国神だ。 「ああ、そうだ。だがこれは古代神殿だ。正教会は城と街の境にある」 「古代神殿…」 言われてみれば、全く手入れがされていないのが見て取れる。 そもそも入口の扉がない。 そういう設計なのだと思っていたが、よく見ると蝶番の跡がある。 腐り落ちてしまっているのだ。 「ここは、ルグヴァインに愛された少女を祀る神殿という意味合いが強く、今では祈りを捧げる者もいない」 「ルグヴァインに愛された少女? そんな方がいたのですか?」 ルグヴァインは戦場に在るものしか愛さない。 《番人》ならともかく、今でも戦場に赴くのは圧倒的に男性が多い。 古代ならばなおさらだろう。 そんな神に愛されたが少女がいたと言うのは、神話は読んだことがあるアクアも聞いたことがなかった。 「彼女は我がローアジャウルの初代王を助け、建国へと導いたとされる。星巫女と言う称号を持っていたそうだ」
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