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説明しながら、龍威は神殿の中へと足を踏み入れる。
アクアは慌てて後へ続いた。
「黒い髪。金がかった青色の瞳。自らを牙の民だと称する少女。彼女の呼び声に、必ずルグヴァインは応えたそうだ」
「そんなお話をするために、ここへ連れて来たのですか?」
ステンドグラスの天使の正体はこれだったのかと考えながら、アクアは問う。
石造りの建物の内部はひんやりとしている。
入口側からは見えなかったが、荒れ果てて朽ち落ちるのを待つばかりの建物だということをそこかしこに見てとれる。
「私がこれからするのは、王家の人間のみに伝えられた話。その少女はこの大陸どころか、この世界の外のどこかから、来たのだということだ」
「…!!」
龍威はその存在を知っていたのだと知らされたアクアは驚いた。
その存在を信じているのかまでは分からないが、確かに彼は異世界の存在を知っているのだ。
「サラファリアに放った密偵から今朝伝言が届いた。首都サーガイア近辺の町に皇女とそっくりな顔をした者が泊まった形跡はないとな」
話を変えた龍威はいったん言葉を切り、アクアの方へと振り向く。
「アクア。君は一体どこの者だ? サーガイアから馬で二日以内の主要な町はすべて調べたと報告にはあった。君はサーガイアに来る前は、どこの町に泊まったのだ?」
「っ!…それは」
口ごもるアクアの様子を見て、龍威の目が険しさを増した。
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