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「私は、自分とこの国を守るために沢山の犠牲を出した。この手は朱に染まっている。これからも染まり続けるだろう。それでも、私の傍にいると誓えるか?」
「私は人々を守るために多くの命を奪いました。この手も朱に染まっています。貴方を恐れるとお思いですか?」
龍威の腕にさらに力がこもる。
見上げると、すぐ近くで目が合う。
「私の王妃になる者が君みたいな人でよかった」
それでは答えになっていないと、アクアは少し不満に思う。
それを感じたのか龍威が微笑んだ。
「アクア。君の望む形ではないけれど、すでに君は私の大切な人だよ」
そう、言った。
「左手をかしなさい」
アクアを解放した龍威がそう言う。
言われるままに手を出すと、龍威は中指に指輪をはめる。
(って中指?)
「王妃の証だ。持っていなさい。…どうした?」
「いや別に…何でもないです」
「アクア。先ほど隠し事は無しだと約束したね?」
いきなりそれをついてくるなんて卑怯だとアクアは思った。
「それに言葉遣いも気にすることはない」
「え?」
かあっと顔に血が昇るのをアクアは自覚する。
見破られていたのだ。
「意地悪」
「何とでも言いなさい。それで?」
さらっと言い返される。
「…私のところでは、薬指にするのよ。結婚指輪。だから意外に思って」
「なるほど。しかしそれは中指にするものだ。すまないが」
「うん、わかってる。伝統は、おろそかにするものじゃないしね」
そう、本来の口調で言うと、龍威はどことなく嬉しそうな表情をする。
「やっと、元気になったようだ」
「?」
「どことなく一生懸命な感じがしていたんだ。無理をして明るくふるまおうとしているのかと思っていたんだが…。自分を抑え込んでいたんだな」
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