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この人にはかなわない。
アクアはそう感じた。
それほど年が離れていないはずなのに、どうしてこの人はこんなにも大人なのだろうかと、思う。
「…ありがと、龍威。気づいてくれて。本当は、気づかれちゃ駄目だったはずなのに、今、すっごく嬉しい」
照れ隠しにそっぽを向いて言う。
「それは結構。アクア。もうひとつ、約束をしてくれるか?決して私の敵にならぬことを」
「はい」
「そろそろ帰ろう。今後のことをキール達と打ち合わせしておかなくてはいけないしな」
アクアはふとあることを思い出して慌てる。
「あの、そう言えば私、今日面会の予定があったんじゃ…」
「アクアの体調が悪いと言って明日にさせた」
そういう龍威は悪戯をした後の子供みたいに楽しそうだった。
「お帰り、首尾は?」
「何とかな。シーア、お茶を」
「わかりました。陛下」
出迎えてくれたキールとそれに応えた龍威の会話で少し首を傾げたアクアだったが、すぐに気づいた。
話を聞き出すためにあんなところへ連れ出したのだと。
誰も来ない、神殿跡なんかに。
(どおりで、出かける時にキールが頑張れなんて言うわけよね)
「…と、言うわけだ。アクア、何か補足は?」
「ないわ」
アクアがここに来るまでにいきさつを龍威は二人に説明した。
二人とも驚いていたようだが、出かける前とは別人になったかのような振舞いをするアクアに納得せざるを得ないようだ。
「で、龍威。これからどうするんだ?」
「サラファリアに送った密偵によれば、あまりおおっぴらでないものの、軍部の増強を図っているとのことだ」
龍威の言葉にドキッとするアクア。
「龍威。やっぱり戦争になるの?」
「向こうの出方次第ではな」
「そっか…」
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