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アクアは、サラファリア皇家の人たちの顔を思い浮かべる。
国を守るために、と頭を下げた皇。
闊達で妹思いな青牙。
非のないお姫様だった空愛。
そんな空愛らを慈しみ深い目で見ていた皇妃。
彼らを敵に戦う。
「大丈夫だ。国力で言うなら、わがローアジャウルの方が上だからな。…辛いかも知れんが」
「…うん」
顔見知りと戦うことは、《番人》にはよくあること。
そう言われ、そのための覚悟もしてはいるが、実際そうなって落ち込むということはまだまだ甘かったのだとアクアは悔しく思う。
戦争になった時は、彼らと戦う。
龍威の味方となることを決めたのだから。
「キール。全軍に戦の支度をさせよ。ただし、見かけはいつも通りにするように気をつけよと伝えよ」
「おう」
「シーア。密偵のうち、腕の立つものをサラファリア国軍へ潜り込ませろ。たとえ我が軍と交戦しても手を抜かず、手柄をあげ、中枢へ近付けるよう、努力しろとくぎを刺しておけ」
「御意」
そう言った龍威は王の顔をしていた。
その後、すべての打ち合わせが終わる頃には、外はもうとっくに暗くなっていた。
「陛下。夕餐はどうされますか?」
「アクアの体調不良を言ってあることだし、ここへ運ばせろ。しばらくは四人でここで食事をすることも伝えろ」
「承知いたしました」
シーアに続き、キールも部屋を出ていく。
根を詰め過ぎたのか、やや疲れた顔で龍はソファーに体を預けた。
「疲れた?」
「少し、な。君こそ疲れていないか?」
「平気」
何時間にも及ぶ作戦会議なんて訓練生時代からいくつも経験している。
「私のことは気にしなくていいよ。龍威は自分の信じる道を行ってね。ちゃんとついていくから」
「…頼もしい。さすがと言うべきかな?…本当の空愛姫では望めなかった関係を築けそうだ」
「それはそうでしょう。お姫様って言葉が全然違和感ないお姫様だったよ。空愛姫は」
「そうか。…だから逃げたのだな」
「多分ね」
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