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次の日、朝食を終えた後、アクアはシーアによって“お姫様”に飾り立てられていた。
これから“空愛姫”としてこの国の重鎮である面々に会いに行くのだ。
といっても、朝議に飾りとして出席するだけで何か話し合いをするわけでもないらしいと聞いて、安心するアクアであった。
「すばらしいですわ、姫様」
「衣装負けしてない?コレ」
初日は馬車で移動して来た後だったし、昨日は簡素なドレスを着ていた。
なので、この国に来てから正装するのはこれが初めて。
豪華な刺繍を施されたドレスに、惜しげもなく宝石をちりばめたアクセサリー。
「アクア。そろそろ良いか?」
扉の向こうで、龍威の声がした。
いよいよ時間だ。
「どうぞ、陛下。姫様は大変お美しいですよ」
「褒めすぎだってば、シーア」
慌ててアクアは訂正する。
美しい、なんて言葉が似合わないことは自分でもよく知っている。
「龍威も本気にしないでよって…龍威?」
息をのんで動かない龍威。
しばらくして我に返った龍威はこう、言った。
「すまない。見とれてしまったようだ。綺麗だよ、アクア」
「なっ…何っ…」
思いもよらない言葉に、アクアはうろたえる。
「さあ、行こう。心配しなくともいい。私がついている」
そんなアクアの内心を知ってか知らずか、龍威は平然と手を伸ばし、エスコートしようとする。
「ああ、うん」
無理やり心を落ち着かせ、アクアは差し出された手を取り、部屋を出る。
大階段を降り、今まで言ったことのない回廊へ進む。
この先は政務専用の棟へと続いているのだそうだ。
「アクア、ここからは」
「わかってるって。まかせて」
これからアクアは再び“空愛姫”を演じる。
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