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「陛下、並びに王妃陛下、ご到着です」
二人が入ったのは、大広間と言えそうなくらい広い部屋。
中央に赤いじゅうたんが敷かれ、周りにたくさんの人が立っている。
奥に二つある椅子が王座なのだろう。
「皆の者、紹介しよう。わが王妃、空愛だ」
王座に座って開口一番、龍威が言った。
アクアは座ったまま、軽く会釈し、ざわめく一同と目が合わないよう、下を向いた。
朝議が終わるまでずっと見世物にされるアクア。
龍威はずっと、望まぬ王妃に機嫌を損なっているように見せかけるため、わざと見向きもせず、重鎮と話を続ける。
当然、意見を求められることもなく、誰にも話しかけられないまま、すべてが終了し、退場する。
「大丈夫か?」
私室のある棟に帰ってくると、龍威がそう言った。
「平気よ。仕方ないわ。サラファリアなんて敵国なんでしょ? この国にとっては」
「…すまない」
「何で謝るの?」
「辛い思いをさせるとわかってて連れ出した」
そう言う龍威は自分が辛そうな顔をしていた。
「大丈夫。だから気に病むことはないわよ。他に考えなきゃならないことは山ほどあるんでしょ? 国王陛下?」
わざとおどけた調子で言うアクア。
それを見た龍威はほっとしたようだった。
「ありがとう。そう言ってもらえるとは思ってもみなかったから安心した」
引き続き政務があるという龍威と別れたアクアは私室へと引き上げる。
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