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「姫さん、いいか?」
夕刻、政務を終えたらしいキルアイドが部屋を訪ねてきた。
「どうぞ」
例によって、四苦八苦しながら絵本を読んでいたアクアはキールが運んできた本の山にびっくりした。
「何、それ。そんなにいっぺんには読めないわよ」
「それはわかってる。でも図書館って隣の棟にしかないしな。行くの嫌だろう?」
周りの者から冷たい目で見られるから。
キルアイドが言わなかった言葉をくみ取ってアクアはうなずいた。
この棟から一歩でも外へ出れば、そこにアクアの居場所はない。
「そだね。ありがと」
沈んだ気分で、アクアは本の山を見やる。
「ねぇ、私、このままでいいの?」
「今は仕方ないだろうな。じじいどもがうるさくてな。サラファリアとの密偵と会わないか四六時中見張ってろ、だとよ。まったく」
じじい、と吐き捨てたのは朝に見かけた重鎮たちだろう。
確かにお年寄りがほとんどだったとアクアは納得した。
「あいつらのおかげで国政が上手くいってないんだよ。姫さんのことだってそうだ。人質として取ったんだから、どこかに閉じ込めておけってうるさかったんだ。それを何とか説き伏せて見張りをつけるってとこで妥協させた」
キルアイドが言う通りだと、彼らは初めから“空愛姫”を王妃として認める気はないらしい。
「でもこのままじゃあ、私、みんなの足手まといにしかならない。認められないまま、ずっとこの部屋で本を読んで生活するの? 龍威の役に立つことが出来ないじゃない」
そうアクアが言うと、キルアイドは意地悪そうな笑みを浮かべた。
「あるじゃないか。王妃様にしか出来ない、大切な事が」
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