第三幕

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「それほど待たせる気はない」 不意に龍威の声が割って入った。 いつの間に戻っていたのか、扉を開けて入って来る。 自信にあふれるその言葉に、アクアは不安が吹き飛ぶのを感じた。 「キール。すぐにアラム隊を準備させろ。ミュライアー家がサラファリアと通じている証拠がとれた」 「了解」 「シーアにここへ来るよう伝えてくれ」 「…わかった」 命じた龍威も、それを受けたキルアイドも沈んだ表情を見せている。 キルアイドが出ていくのを見届けた龍威はソファーに座った。 沈み込むという表現がふさわしい姿勢を取る。 「龍威、大丈夫?無理しないでよ」 アクアは隣へ移動して、手を握った。 疲れた横顔。 サラファリアと通じていたとはいえ、臣下を粛正するという決断をしたからだろうかとアクアは思う。 「アクア」 「何?」 「ミュライアー家当主はシーアの父親だ」 思わず龍威の顔を凝視してしまうアクア。 (シーアの父親?) 「陛下、お呼びでしょうか」 しばらくしてシーアの声がした。 「入れ」 姿勢を正して龍威が入室の許可を出す。 「このたびは父が申し訳ないことをいたしました」 入るなり、シーアは片膝をついて謝罪する。 「今回の作戦からはお前を外す」 「はい」 「しばらくはアクアの世話に専念しろ」 「承知いたしました」 そう言うシーアの顔は少し寂しそうだった。
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