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「私の父は、陛下の御従兄様を王位につけたがっているのです」
キルアイドが用意ができたと呼びに来て、龍が出て行った後、シーアはぽつぽつと話しだした。
「前国王がご逝去された時、陛下はまだ十五歳になられたばかりでした」
十五と言うことは、今のアクアと同い年。
その時に国を負わされたのかとアクアは龍威を不憫に思う。
「幼い王を立てることに反対する声は当然、上がりました。議会は二つに割れ、対立していったのです。陛下を立てる、前王弟でもある宰相を筆頭とする一派と、前王姉様のお子様である、駆悠様を擁立しようとする反対派とに。その頃から、父は反対派の筆頭でした」
そう言うシーアの顔は泣きそうになっていた。
アクアは黙ったまま先を促す。
とにかく、言いたいことを吐き出さないと精神上良くないことは、経験上知っている。
「私はキールとともに陛下の学友として側に仕えさせていただいていました。何度も父を説き伏せようと試みたのですが…」
叶わず、父と対立したまま、半ば家出のようにこの棟へ部屋を貰って移ったのだとシーアは話した。
「家とはそれきり、交流もなく」
一筋、また一筋と涙がこぼれる。
止めようとするシーアにアクアは優しく言う。
「泣きたいの、我慢するのは良くないわよ。親と対立するのは悲しくて当たり前なんだろうから、無理しないで」
「はい、ありがとう、ございます」
それからしばらく、部屋は静まり返った。
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