身売りと純粋

2/6

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
冷たい雪が鼻に触れ、溶けていく。 俺は灰色の空を見上げ、ただただ立ち続ける。頭上から落ちてくる白い小さな物体。それはみるみる頭や肩、足元を埋めていく。 吐く息が白くなり、消えていく。鼻や手からじんわりと鈍い痛みが走っている。 目の前に広がる銀世界。前後左右、山が立ちはだかるこの場所で、俺は今日も、君を待つ。 振り返ると、そこには、木製の宿屋。数年前、亡き両親から譲り受けた唯一の形見。 俺はそこで君と出会い、別れた。 共に過ごした時間は、たったの一日。 それでも俺は君を忘れない。 君を待ち続ける。 ここで。いつまでも。 君が、身売りをやめる日まで。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加