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冷たい雪が鼻に触れ、溶けていく。
俺は灰色の空を見上げ、ただただ立ち続ける。頭上から落ちてくる白い小さな物体。それはみるみる頭や肩、足元を埋めていく。
吐く息が白くなり、消えていく。鼻や手からじんわりと鈍い痛みが走っている。
目の前に広がる銀世界。前後左右、山が立ちはだかるこの場所で、俺は今日も、君を待つ。
振り返ると、そこには、木製の宿屋。数年前、亡き両親から譲り受けた唯一の形見。
俺はそこで君と出会い、別れた。
共に過ごした時間は、たったの一日。
それでも俺は君を忘れない。
君を待ち続ける。
ここで。いつまでも。
君が、身売りをやめる日まで。
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